渡辺範彦というギタリスト

一番身近に感じた演奏家だった、池袋の現代ギター社があったころ、河野ギターの社長がよくミニコンサートを開いていたので、聴きに行った彼の愛用の河野ギターは美しい音色を奏でていた彼の爪は少し長めで弾いていたが爪の音などは気にならなかった、完璧主義のテクニシャンの演奏家なのでライブでもその完成度は高く生演奏は素晴らしかった、彼はちょっとチェリストのカザルスのような感じで小柄で無骨な体型だが奏でる音楽は繊細で力強く憎らしいほど上手いのである、しかしまさかこんなに短命で世を去るとは思っても見なかったので、まるで夢の中の存在のようである、私も若かったし彼もシャイな人だったので言葉は交わしたことがないが、目と鼻の先近くで演奏を聴くことができたのは幸いだった、時々CDの録音を聴くが生演奏とは全く違うのだった、ライブ録音でもそれは同じだ、やはり生きていた彼の存在は大きかったと思う。

クラシックギター
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