ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番“皇帝”」
名演探訪~特選・小澤征爾のライブ。
少年時、小澤征爾のピアノの師匠は豊増昇でした。
戦前にベルリンでリサイタルを開き、1956年にはベルリン・フィルで日本人初のソリストとしてカイルベルトと共演した伝説的ピアニスト。
小澤が禁止されていたラグビーで指を骨折しピアノを諦めようとした時、「君は指揮に進む方が良い」と助言したのが豊増でした。
ちなみにわが恩師福永陽一郎の音楽学校時代、音楽の何たるかを示してくれたのも豊増昇であったそうです。その豊増とベルリン時代から亡くなるまで親交があったのが大ピアニスト、ウィルヘルム・ケンプ。
1965年トロント響に就任したシーズン早々の9月に小澤はケンプとベートーヴェンを共演しています。
ケンプにとっては親友の弟子がどんなものだか興味が有ったかもしれません。
ここで紹介するのはその翌年のベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番“皇帝”」です。
1966年11月、ただしオーケストラはトロント響のライバルであるモントリオール交響楽団です。
当時のモントリオール響の音楽監督はメータ。
彼が友人のモントリオール・デビューを計画したのか、あるいはケンプ自身が一年前の小澤の指揮を気に入って御指名が有ったのかもしれませんね。ともあれ非常にレアな組み合わせの「皇帝」ということになります。
ケンプは70歳、パーキンソン病発症以前の奔放で、剛健なピアニズムが健在で、ミスタッチもありますがケンプの「皇帝」ライブではベスト・パフォーマンスだと思います。小澤の力の入れようは相当なもので、特に第3楽章では終始唸り声が聞こえるのが熱中型の彼らしい。モノラル録音なのが残念ですが、圧倒的なベートーヴェンを堪能できます(過去紹介済音源)。
クラシックギター
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