私は元材木商だったので木材については詳しい、クラシックギターで一番大切な部分は表面板になる、
単板の無垢材が理想だが廉価なものは、突板貼りといってベニヤのような合板を使っている、
側面板や裏板はローズウッドやハカランダといった硬い素材が使われている、
クラシックギターの音は表面板さえ良ければ良い音が出ると側面と裏板をアルミ金属で作った実験楽器も作られたくらいだ、
個人的には私はスプルースといって松系の素材が好きだ特にハウザーに使われているドイツ松に憧れる、
ドイツの松は新しい時は真っ白に近い色で日にちを追うごとに黄色みを帯びてくる、私の愛用するオスカーテーラー(ドイツ)もこのドイツ松だが、
楽器として鳴り始めるのに10年ぐらいかかった、新しい時は音量に乏しく、くすんだ音だったが40年たった今は素晴らしい音が出るようになった、
松系の素材は耐久性が高いので長く使用できる、反面杉材のクラシックギターで有名なラミレスだがスペイン杉の赤みを帯びた素材が使われている、
杉は軽くて柔らかい木質なので新品の時から良く鳴る性質を持っている、そのかわり耐久性に欠けるので寿命が短いとされる、
制作家はいろいろ工夫してその欠点を補う作りをしている、あと、ネックはマホガニなどが多いが複数の素材を張り合わせて反り防止の加工がしてある、
ネックを裏から見るとライン上に見える模様がそれだ、
さらにネックの取り付け方にはドイツ式とスペイン式があって伝統的なスペイン式に対してハウザーが考案したドイツ式の工法が今は主流になっている、
糸巻きの加工も面白いのだが、高級な手工品のハウザーなどは角ノミを使って四角に角張った手の混んだ加工がしてある、
またネックのヘッドデザインは制作家の個性を表す重要な部分でハウザーやラミレスは特徴的なデザインで、
それとすぐ分かる日本でも中出坂蔵のギターヘッドの彫刻は美しかった、
バイオリンは何百年も寝かせた材料で作られるが、ギターの素材もそれなりに乾燥させ、
熟成させる期間が必要だ、近年だんだん良い天然素材が枯渇しているので、制作家は苦労が耐えないと思う、
どんなに優れた技法を持った職人でも素材に恵まれなければ良い仕事はできない道理だ、
自然を大切に後世に資産を受け継げさせるのも我々の責任だと感じる。